幕末に、ひょいと日本に来て、出島で商売していた印象の国だけど、ヨーロッパの強国に囲まれたあの位置で、独立国として維持する為には、当然紆余曲折があった。
商売でそこそこうまくいっていたネーデルランド地域に、スペインのハプスブルクが支配権を確立しようとして戦争になり、プロテスタント地域が何とかそれを撃退したのが1600年あたり。オランダ東インド会社の設立が1604年。その後東洋の覇権をイギリスと争いながら繁栄し、チューリップバブルが1637年。造船、毛織物、各種貿易で繁栄。芸術も盛んになり、裕福な商人を顧客にして絵を描いたのが、レンブラントやフェルメールで1600年中頃。もう一人有名なブリューゲルは少し前の1500年中頃の人で、ハプスブルグ家のウィーンにある美術史美術館の所蔵品が多い。
今回この本で、オランダが何度もイギリスと戦争してるのを初めて知った。第一次は1652年で、クロムウェルが、公開条例で英国船がオランダ船を襲う事を合法化した事を機に始まった。江戸時代初期は、まだ東南アジアはオランダが抑えており、日本にはオランダ船が来ていた訳です。
1688年に名誉革命という形で、オランダの総督が、イングランドの王になったあたりで、イギリスとオランダの力関係が逆転してゆく。フランス革命のような血みどろの殺し合いなく国王を追い出し、議会制民主主義を確立したと教わったが、そう単純な図式ではない様です。敵対国の総督を迎え入れ、海軍力を自国に取り込み、議会制民主主義という歴史の流れに正当化する、英国ブルジョワジーの企画力、構想力が素晴らしいですね。
この後、制海権を握った英国は帝国となり、オランダは衰退パターンになるものの、英国がインド、中国といった利益の大きい地域に力を注ぐ中で、極東日本との交易、インドネシアだけは植民地として確保し、国を維持したという事になるみたいです。政治史が中心ですが、図説シリーズなので、写真が多く、読みやすい本です。
この本の内容とは離れるが、日本人はオランダに対して、デニッシュと風車の国程度の認識しかないけど、結構反日感情が強い国の様です。第二次世界大戦をきっかけに、虎の子の植民地を失ったり、インドネシアを占領した日本軍による捕虜の虐待、現地のオランダ人への取り扱いが原因です。